【みらいzoom19】PBLをどうデザインするか
2019年03月29日 更新
経済産業省の事業「未来の教室」で採択された「STEAM ×PBL」
この「STEAM ×PBL」プロジェクトは、2000年からPBLで完全実施しているアメリカのHTH(米国のカリフォルニア州にあるHigh Tech High というチャータースクール)から学び、日本型プロジェクト型学習(以下、PBL)普及に向けて、良質なPBLが各教育委員会と学校で広く実践されることを最終目的とされています。
ちなみに、アメリカのHTHは、ドキュメンタリー映画「Most Likely to Succeed」となり、
話題になったのでご存知の方もいらっしゃると思います。
Mistletoe株式会社を中心とした協働チームに声をかけてもらい、
東京での事前研修のデザインとファシリテートに関わらせてもらいました。
そのご縁から1月の年明け早々に3日間かけて行われた、本番研修に見学に行ってきました。
HTHから実際に生徒を指導している先生が研修講師となり、PBLを学べる研修。参加者は、全国のPBLを実践している、これから取り入れようとしている教員、教育委員会のみなさん。
講師である、HTHのアメリカ人の小学校と高校の先生がなぜHTHに関わることになったのか、何を大切にしているのか、
丁寧なストーリーテリングから始まりました。HTHのカリキュラムや教員と生徒の関わりには共感することばかりです。
HTHが大切にしていることは、まさにこれからの学びに必要な視点。エッセンスを紹介します。
一つ目は、公平性:
HTHでは生徒を認識された学力によって振り分けしない。郵便番号による抽選。学校・各クラス共に多様性、全体性を考慮し設計されている。全ての生徒に強みと弱みがあると思っている。
二つ目は、個別化:
少人数制クラスで生徒と先生の比率が低い。20人しか教室にいない。二人1組の先生がプロジェクトを考え、提示している。入学するとアドバイザーが一人付き、卒業するまでその人がアドバイスしていく。プロジェクトの選択肢があり生徒が興味のあることを探究できる。
三つ目は、真正な取り組み:
本物のプロジェクトをしようという考えがベースにある。地域プロジェクト、コミュニティの中で起きている本物の課題を解決して学ぶ。プロフェッショナルを訪問したり、そこから学んだりして課題解決に当たる。
四つ目は、協働するデザイン:
先生は協働するチームで、教科横断型プロジェクトをデザインする。生徒のやりたいと言う声を生かしながら、話し合いを重ねながら。
ご自身の現場を考えてみると、そんなの無理と思ってしまうかもしれません。
アメリカだからできるのでしょう?と。
講師のお二人からは、二つのおすすめのアプローチを伺いました。
一つ目は、何かを変える時は学校の文化をよく知ること、そのためにもミーティングをたくさんやる。
二つ目は、全体で進めるのではなく学校の中でお試しグループを作ってまずやってみる。
何か新しいことを始める時は、仲間を集い、まずは小さくやってみる。
その繰りかえし、積み重ねの中で、新しいことをやる「文化」ができるのですよね。
最後に、興味深かったワークを紹介します。「プロジェクトをデザインする」ワークです。
まずは、生徒のPBLの成果イメージ(製品や活動)に対する50のアイデアを出し合いました。
今までの枠組みや縛られた発想から選ぶのではなく、無理だけど可能性がありそうなもの、組み合わせるとワクワクするものなど、対話を通して、成果物のイメージを練り上げていきました。
その中から、一つないしは、組み合わせを選び、プロジェクトをデザインしていきます。
デザインする枠組みは、以下の通りです。
①成果イメージ(製品や活動)は?
②それに対する観客は?
③発表会の仕方や具体は?
次に、
④はじめるきっかけは?
⑤本質的な問いは?(何を学ぶのかということに対する深い問い)
⑥評価は?
⑦内容・スキルは?
を考えます。
私は、教育委員会の方、大学教授と一緒に考えましたが、
できる・できないではなく、
子どもたちにとっての学びは?子どもたちはどんな表情になる?など、具体的にありありとイメージすることで、ワクワクしながらプロジェクトを考えることができました。
最近読んだ本にも、同様な考え方でカリキュラムやプロジェクトづくりについて紹介されていました。
もっと深くPBLのデザインやカリキュラムに興味のある方は、参考にしてみてください♩
▶︎本質的な問いについては
▶︎内容・スキル、評価については
みらいずworksでも「学びのシェアタイム」の時間でメンバーとこのワークを体験してもらいました。
「成果や終わりのイメージを描くことで、見通しが持てるし、先生と共有できる!」とメンバーからは好評でした。
探究は、正解がないため見通しが持ちにくいことが学校で進めていく上での課題の一つ。
その解決策として今回得たこととして言えるのが、
アウトプットつまり、生徒の学びを発信し、成長を実感できる舞台を逆算して考えることが鍵なのですね。
そこでは生徒がどんな表情を見せ、どんな資質能力が発揮されるのかをありありとイメージする。
それを踏まえた上でどんなプロセスが必要なのか、どんな評価をすると学びが高まるのかを考える。
簡単なことではないですが、
PBLをデザインするプロセス自体を私たち大人も探究し、
わからないことを面白がりながら進めていくことが必要ですね(^^)/*