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お知らせ・活動レポート

みらいZOOM14 教育改革に向けて、高校生の保護者ができることとは?

2018年07月10日 更新

ある高等学校のPTA講演会にて、
講演&卒業生によるパネルディスカッションのコーディネーターをさせてもらいました。
テーマは、「AIに負けない!これからの社会を生き抜く高校生を育てるために、親としてできることとは」

社会や教育が変わろうとしている今、
高校生の保護者ができることは何か、講演会や大学生とのパネルディスカッションでの内容を一部紹介します。

まず、これからの社会で、求められる力とは何か、
保護者のみなさんと考えました。

会場では「忍耐力」「コミュニケーション能力」「創造力」「自分で考える力」
などが多かったです。

では、高校生はどのように捉えているかと言うと、
高校生対象の調査結果(※)によると、
「主体性」(53%)物事に進んで取り組む力
「実行力」(40%)自分の意見をわかりやすく伝える力
「発信力」(38%)目的を設定し確実に行動する力
が上位3位でした。

►一方で、将来必要とされるが現在の自分に不足している能力は、
「主体性」
「発信力」
「実行力」
と同様の結果に。

ちなみに、現在持っている能力は、
「傾聴力」(39%)
「規律性」(37%)
「柔軟性」(27%)

であり、上記の結果より、学びや新たな挑戦等に対し受け身の高校生の姿が見え隠れしてきます。

社会の変化や教育改革の方向性の説明は、ここでは割愛しますが、
学校と家と塾の往復の閉じた世界のままでは、日本の高校生は大きな社会の変化に対応することが難しいのではないかと危惧してしまいます。

——
そのような中、高校生の親としてできることは何でしょうか。
卒業生によるパネルディスカッションでの、現役大学の高校生時代エピソードから紐解いてみます。

【エピソード1】
生徒会活動で先生はいちいちやりなさいなど指示をしなかったので、自分でなにかを一から考え、実行する力が身についた。また、生徒会で話し合った経験は、大学のディスカッションなどでも役に立っている。

まさに、次期学習指導要領が目指すように、
思考力・判断力・表現力が身についたエピソードでしょうか。

知識や情報を正しく理解しているだけでは、AIにとって代わられてしまうと言われていますが、
アイデアを出したり、Oから1を生み出す経験は、わくわくと楽しいですよね。私自身も、体育祭で応援団として一から応援歌をつくり、振り付けを考え、後輩に指導して練習した思い出は、何物にも代えがたい経験でした。「人と学び、成長しあう場や機会をつくりたい」という想いは、こういった経験から紡がれていきました。
高校生には、ぜひ何かを創り出す面白さをめいいっぱい体験してほしいものです。

そこから、高校生の親としてできることは、
①様々なチャンスの情報提供と「やりたい」の後押しを
生徒会や体育祭など学校活動にとどまらず、地域のボランティア活動や課外活動、留学募集など、様々な地域や社会に目を向ける情報を提供し、参加の後押しをすること。
そこから視野が広がり、「やりたい」という気持ちや「こんな課題を解決したい」という志が育まれていきます。

——
【エピソード2】
今回、パネルディスカッションを通して、以下の話を聞くことができました。

・父が電力会社に務めていて、父が「電機関係の仕事はどう?」と話してくれたことで、電機に興味を持ち、進路を決めた。
・親が本当はもっと学びたかったという進路選択時の迷いに共感した。
・高校に入るとすぐに有無を言わずに国公立大学に行ってと言われて戸惑った。数学が壊滅的に苦手だったため、自分は私立を希望していた。家の家計事情をちゃんと早い段階で話してもらい、本当に私立がダメなのか、奨学金なども検討しながらちゃんと話をしたかった。

このエピソードからわかったことは、
*親の体験を知りたがっているということ。でも一方的な押し付けや説教として話すのではなく、やりとりをしながら、体験談を語ることを求めている。
*進路を考える上でお金の問題は避けては通れないので、現実の家系事情を高校生は心配している場合が多い。ざっくばらんに話して、互いに状況を理解しあうことが必要。

高校生は、アドバイスではなく、
一緒に悩み、考えること、を求めているのだと改めて感じました。

そこから、高校生の親としてできることは、
②家族や多様な人と対話する機会をつくる
→親の進路選択のエピソードやお金の話など、親の持つリアルな体験や状況を語ることが進路を考えるキッカケになる。また、親だけでなく、親の友人や親戚など、様々な大人と話をすることで選択肢が広がることもある。

【エピソード3】
高校生のパネルディスカッションで、以下のような言葉も印象に残っています。

・受験勉強で学びに向かう力や習慣が身についた
・部活や生徒会など、いろいろな活動を掛け持ちしたことで、時間をやりくりして、要領よくやるための自分なりの学びのスタイルができた。

このエピソードからわかったことは、
*高校時代までに学びに向かう基礎的な力が身につけることが、大学やその後の学びに対する姿勢にもつながっていく。
*自立的に考え、動いた経験は、その後の価値観や実行力にも大きく影響をする。

では、自立的に学ぶために親としてどんなサポートができると良いのかと考えてみると、
「やりなさい」「自分で考えなさい」ではなく、
やり方を一緒に考える
答えを言うのではなく、問いかける  ことでしょうか。

そこから、高校生の親としてできることは、
③自立的に学ぶサポートをする

簡単そうで、難しいですが、
意見やアドバイスではなく、自分で考えることを促すことを心がけていきたいものです。(自戒の念も込めて)

<まとめ>
高校生対象の調査結果(※)によると、進路の話をするとき保護者がよく使う言葉について、高校生の認識は「自分の好きな事をしなさい」が第一位でした。

ちなみに、以下がトップ5です。
1自分の好きな事をしなさい、やりたい事をやりなさい
2勉強しなさい
3自分でよく考えなさい
4自分で決めなさい
5資格取得を目指しなさい

►「自分で…」と高校生に委ねられる言葉については、ポジティブに捉える意見がある一方で、「わからなくて想談しているのにこの言葉を言われると不安になる」「もっと色々調べる必要がある。もう少し相談にのってほしい」などアドバイスが欲しい・自分で決めることに不安を感じるといった意見も挙がっていました。

今回参加してくれた大学生も「親が思っている以上に、高校生は狭い世界しか見えていない。将来の選択肢がとても狭い」と言っていました。

一方で、保護者の71%が進路選択について子どもにアドバイスすることは「難しい」。 と答えています。
►アドバイスが難しい理由は、
1入試制度をはじめ最新の進路情報を知らないから
2社会がどのようになっていくのか予測がつかないから
3家庭の経済的な理由で、子どもの進路の選択肢を狭めざるを得ないから
4子どもにアドバイスできる程、自分の生き方・考え方に自信がないから
5子どもの人生を決めてしまうようなアドバイスをするのは気が引けるから

だそうです。
私自身、親になって2年目ですが、親業について学ぶ機会があまりないので、親としてどう子どもと対峙するかは手探りの日々です。
自分の言動に対する子への影響力を自覚しているので、子どもの未来がかかっていると思うと、自信を持って伝える、話すことはなおさら難しいのもしれません。

先がみえにくい未来だからこそ、
「親も正解はわからない、一緒に学ぼう!調べよう!」という探究の姿勢が大切なのでしょうか。

親のキャリア教育に対する対話の場、学びの場をつくってほしいなという意見をいただくこともあります。

親のキャリア教育、今後も探究していきたいと思います。

<参考ページ>
・中高生向けキャリア教育マガジン「みらいずBOOK」
 ▶︎新潟で働く大人の生き方・働き方を紹介しています。冊子をきっかけに、ご自身の進路選択のキッカケや働く上で大切にしていることなど、子どもと語ってみてください
https://miraisworks.com/miraisbook/archive.html

・リクルート進学総研「高校生の保護者のためのキャリアガイダンス」
 ▶︎新しい入試についてや保護者としてどのタイミングでどう声がけしたらよいかなど具体的なアドバイスが載っています。
 http://souken.shingakunet.com/career_g/hogosha/

(※)
一般社団法人全国高等学校PTA連合会 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ合同調査「高校生と保護者の進路に関する意識調査2017」より