【活動レポート】新潟県社会教育主事講習
2018年02月12日 更新
こんにちは!みらいずworks学生スタッフの上山晃平(新潟大学4年)です。
2月1日(木)、2日(金)の2日間にわたり、アグリパークにて新潟県の社会教育主事講習「参加型学習の実際とファシリテーション技法」を担当いたしました。
社会教育を推進する人に対して、専門的・技術的な指導に当たる「社会教育主事」資格が、注目を集めています。近年、地域や社会に開かれた学校づくりが推進されていることもあり、社会教育主事資格を取得するための講習科目に、ファシリテーションを学ぶ科目も追加されました。今回は、みらいずworks代表の小見がその科目の講師として、ワークやレクチャー等を担当しました。また、サポートファシリテーターとして、学生スタッフの上山と河合も参加しました。
【1日目】
はじめに、代表である小見よりオリエンテーションとして、みらいずworksの理念や活動、ファシリテーションが社会教育主事に求められる理由などをお話しました。
まず、「教育ファシリテーションの基本的なスキルとマインドを体得するとともに、社会教育主事として自分のありたいファシリテーター像を明らかにする」という今回の目標を共有し、「なぜファシリテーションが社会教育主事に求められるのか?」という背景のお話をさせていただきました。文部科学省中央教育審議会の教育課程企画特別部会においても、「教育課程を介して学校が社会や世界との接点を持つことが、これからの時代においてより一層重要となる」とされています。社会と学校の架け橋となる社会教育主事には、そのつなぎ目となる場のコーディネート、およびファシリテーション能力が求められています。
次に、アイスブレイクを兼ねたチェックインとして、フリップゲームを行いました。「今のあなたの気持ちを絵や図で表現してください」というテーマで、A4用紙にまとめていただきました。ペアでその内容を説明し、お互いの気持ちをほぐします。さらに、導入ワークとしてペーパータワーを行いました。4名のグループになっていただき、20枚のA4用紙を使って机の上にできるだけ高いタワーを作ります。まず、どのような手立てでタワーを作るか考える「作戦タイム」を経て、実際にタワーを作る「作成タイム」に入ります。実際にタワーを作ってみて、さらにその後、もう一度タワーを作成します。このワークによって、手を動かしながら考える、体験学習のPDCAサイクル(「作戦①=Plan」→「作成②=Do」→「作成③=Check」→「作成④=Act」)を体験していただきました。
休憩を挟み、「価値ランキング」というワークを行いました。先ほどのペーパータワーは、「一つのタワーを作る」という目に見えた成果がありました。この価値ランキングでは、目に見えない「価値観」について、あるテーマに沿ってグループで順位をつけていただきます。
テーマは、「組織が成長するために必要だと思うこと」。組織を成長させるために、最も大切にしたいと思うことを、まずは個人で順位付けします。順位付けする項目には、「トップ」「採用・人事」「教育・研修」などが並びます。次に、それらをグループで共有し、その順位をつけた理由を共有していきます。最後に、グループで合意形成した順位付けをしていきます。すべての順位をつけられたグループもあれば、途中で終わってしまったグループもありましたが、合意形成の難しさや、メンバーの価値観を考えながら議論することの大切さを体験していただきました。
人によって、物事への価値づけや認知は異なっています。時間がかかったとしても、そうした気持ちの裏側を共有することで、「本当はこうしたかったのに……」というもやもや感が消えていきます。メンバーとの対話による回り道は、全員が歩幅を合わせながらチームを動かすことにつながります。
ファシリテーションを活用しながら、「ペーパータワー」と「価値ランキング」で合意形成について学んだところで、小見から「教育ファシリテーターの役割とスキル」と題したレクチャーをさせていただきました。ファシリテーターにとって重要な「聴く」力、プログラムや場のデザインなど、みらいずworks流の教育ファシリテーションについてお伝えしました。
この後、「3人インタビュー」というワークを行いました。「聴く」「話す」「書く」という3役に分かれて、「学習者として、学びに火がついた時はどんな時ですか。それはどうしてですか。」という問いをテーマに、インタビューをしていただきました。3役は3回ローテーションし、グループの誰もがすべての役割を経験します。レクチャーの後、すぐにファシリテーションスキルの実践を行うことで、理論と実践の両立を図りました。
続いて、教育ファシリテーションにおけるアサーションのレクチャー・演習を行いました。アサーションとは、自己と他者を公平に尊重することを前提とした「自分と相手を大切にする表現技法」です。アサーションにはアグレッシブ(攻撃的)・ノンアサーティブ(非主張的)・アサーティブ(相互作用的)という3つのタイプがあります。自分自身はどのタイプにどの程度当てはまるのか、相互作用的な関係をつくるにはどうすればよいのか、自己のメンタルモデルに気づき、考える時間となりました。参加者からは「真摯に向き合う(自分・相手の課題も含めて)」「話をよく聴く」「互いに良くなりたいという気持ちが大切」という意見が出ていました。
次に、質問づくりワークをしました。テーマである「社会教育のこれから」を起点に、各グループできるだけ質問をつくります。「社会教育は本当に役に立つの?」という根本を考える質問から、「家庭教育との連携はどうすればいいの?」といった具体的な困り感に基づいた質問まで、たくさんの問いが生まれました。最終的に班で1つずつ、グループで話し合いたい問いを決めました。
・社会教育で地域は活性化するのか
・社会教育のPR方法を考える
・社会教育によって地域力はUPするのか
という3つの問いについて深めることになりました。
各グループで問いを深める前に、1日目最後となるファシリテーションのレクチャーを行いました。ここではファシリテーション・グラフィック、学びや成長のフィードバックについてお話しました。積極的に意見の積み重ねやつながりを描く姿勢は、このレクチャー以降すぐに実践されているグループが多く見受けられました。
そして、1日目最後のワークとして、先ほどの質問づくりによって生まれた、話し合いたい問いについてグループで深めていきます。ファシリテーション・グラフィックを活用しながら、問いに対する解決策や問題となるポイント等、議論における発散と集束を意識しながら、楽しくディスカッションが行われていました。
最後に、本日の振り返りを書いていただき、1日目は終了となりました。
【2日目】
2日目ということで、まずは「キャッチ」というアイスブレイクで講座をスタートさせました。全員で円になり、メンバーの一人が「キャッチ!」と声を出したら、左手は隣の人の指をつかみ、右手は隣の人に指をつかまれないよう手を離します。簡単に頭と手を動かすことで、リフレッシュした気持ちでワークに臨むことができます。
次に、昨日の振り返りを共有しました。
「今まではFTの形だけしかわかっていなかった。聴く・引き出すということが理解できた」
「自分は話を聴いているときに自分の解釈をしてしまっているということに気づいた」
「書くって受け止めることだということを実感することができた」
などの意見が出ました。
続いて、いよいよ本講習最後のグループワークとなりました。「マグネットテーブル」という、自分ごとで取り組みたいテーマについて話し合うワークです。今回のテーマは、「今までの時間を経て、実現したい場とは?」です。
まずは個人でテーマ設定をし、その後歩き回って話し合いたいテーマに基づき、4~6人のグループを作ります。ひとりひとり自分の話し合いたいテーマについて、話し合いながらグループをつくっていく様子が見られ、活気あふれる時間となりました。
その後、集まったグループで「みんなが働きやすい、明るい職場をつくるために」「みんなが話せる場とは?」といった各テーマで話し合いが行われました。幅広い経歴・年代の方々が集まっての話し合いだったこともあり、様々な視点からの意見が交わされていました。中には、具体的な施設案を立てた班もあり、楽しみながら話し合いを行っていました。
次に、2日間の学びを振り返り、ひとりFG(ファシリテーション・グラフィック)を行いました。こんなファシリテーターになりたいというイメージをA3用紙に絵や図や言葉で描いていきます。この2日間で様々なことを吸収し、自分なりのファシリテーター像を確立した方が多くいらっしゃいました。
最後に、1日目のチェックインで行ったフリップゲームで、チェックアウトをしました。ここでは
・2日間の学び
・明日からの一歩
について、円になって共有しました。
・まだまだ学べるんだなと感じた。
・意見や考えを言い合えるのは楽しいと気づいた。これからたくさん挑戦したい。
・具体的な様々な手法を学べたのが良かった。
・アサーションマインドの重要性を感じた。
など、参加者の皆さまからたくさんの感想をいただきました。この2日間の学びをぜひ、明日からの一歩に生かしていただきたいと思います。
社会教育の領域でもファシリテーションの重要性が認知されてきており、社会教育主事講習のなかの2日間を担わせていただけたことは大変うれしく思っています。この講習を経て、参加者の方々が自ら学び、話し合うということの楽しさや喜びを知っていただき、地域・家庭・社会・学校が協力して子どもを育てていくために、今後もファシリテーションを学び、活用していただければ幸いです。
【学生スタッフ 上山晃平】